新時代をつくる生成AI
2022年にOpenAI社が公開した生成AI「ChatGPT」を代表として、AI技術は爆発的な発展を遂げました。今ではスマートフォンやPCにある程度の対話が可能なAIが組み込まれ、ビジネスの現場や日常でもAI技術を利用するケースが増えています。
テキストだけではありません。2022年に公開された「Stable Diffusion」をはじめ、画像生成を行えるAIも開発され広く利用されはじめています。公開初期は特有のエラーや画像の破綻が目立つものでしたが、近年ではすぐに見分けがつかないレベルにまでクオリティが上昇してきました。
さらに、写真のような画像だけでなく「イラスト風に」「白黒で」といった指定も可能になり、今や「○○の画風で」といったクリエイターに寄せる生成も可能になってきています。動画にもリアルタイムでAIによる補正がかけられるようになり、今後ますます技術は進歩していくことでしょう。
ちょっと待った!AI技術の問題点
ところが、生成AIをはじめとしたAI技術にはいまだ解決していない問題が多く存在します。AIがユーザの望む出力を行うためには、事前に「教師用データ」と呼ばれるデータを用いて学習を行います。この教師用データに著作権や肖像権、はたまた商標権を侵害するデータが使われていることが発覚、ないし指摘されるケースは珍しいことではありません。
そのほか、画像生成AIを使った「なりすまし」が起きていたり開発者の意図しない使い方をされたことでAIが法的なトラブルを起こしたりと課題も多く、AI技術そのものの規制論も出ているほどです。
これはAI技術の急激な躍進に対して法整備や個人利用の範囲を逸脱した権利意識へのブレーキが追いついていないことが理由のひとつとして挙げられています。
過去の事例から最新の問題を考える
実は、先に紹介したような権利のトラブルはAI以前から度々争われています。
- ゲームのセーブデータは著作物たりうるか
- 工業デザインに著作権は認められるべきか
- まったく異なる分野の商品でも商標の類似は避けるべきか
- ドラマ化による脚本の変更はどこからが権利侵害か
- 写真の被写体や配置に権利はあるか
- 知らずにそっくりの著作物を作ってしまうとどうなるか
- ゲームや漫画のキャラクタはどこまで似ていると「同じ」とされるのか
- 引用と改変の差はどこにあるか
といった過去の事例は、AIトラブルを判断するにあたって重要な参考となるでしょう。また、
- AIそのものに著作権は生じるのか
- AI生成物は誰のに権利が生じるのか
- AIユーザが起こしたトラブルの責任は開発者にも生じるのか
- トラブルが起きたらどの点を解決すればいいのか
といった新時代の権利問題についても、今後様々な事例や知見が溜まっていくことと思われます。それらを「考える」「理解する」一助となるのがこの書籍です。
弁理士とともに知的財産権を考えよう
本書は国際的に活躍する弁理士である著者による、「AI時代の知財問題を考える」本です。
知っているようで知らない知的財産権の種類から内容の話、AI技術の話を踏まえ、過去の権利トラブルがどういった点で判断されたのか、それを基にAI技術ではどこが問題となるのかを、執筆時の最新AI事情と絡めて解説していきます。
「AIは悪であり即刻廃止すべき」「AIは問題のないツールであり反対するのはおかしい」といった“結論を出す”書籍ではありません。
権利問題のスペシャリストとともに、新時代の権利問題を考えましょう。AI開発者のみならず、クリエイターや一般のAIユーザなど幅広い層に役立つ一冊です。