Power Automateで「快適⁠快速」シゴトを実現しよう!

「業務自動化ってドコから始めればいいの?」というあなたへ

リマインドの投稿、メールに添付されたファイルの管理、出張の申請・承認などなど。日々のデスクワークには、めんどくさい繰返し作業が溢れています。⁠この時間、他のことに使えたらいいのに……」と思いながら仕方なくこなすシゴトに、(本稿の筆者)の大事な人生が費やされている。これはとても悲しいことです。

こういった悩みは、RPAツールを使えば解決できる、とされています。RPAとはRobotic Process Automationの略で、PCを使った業務を自動化する仕組み(ロボット)や概念のこと。生産性の向上やシゴトの効率化が求められる現代において、RPAの導入は多くの企業にとっての課題になっています。

しかし非エンジニアとしては、⁠どうやるのそれ……?」となってしまうのも事実ではないでしょうか。⁠業務の自動化」という響きには夢があるのものの、実際にそれを実現しようとすれば「ドコ」から始めればいいのかわからない。特にプログラムが書けない筆者にとっては、雲をつかむような話にも聞こえてしまいます。

このような方にオススメのRPAツールが、Microsoftが提供している「Power Automate」です。Power Automateの大きな特徴は、ノーコード・ローコードで開発が可能な点にあります。つまり、複雑で専門的なプログラミングコードを書く必要がないため、専門家に依頼をしなくても、自分の業務の効率化を自らの手で実現できるのです。

さらに、Microsoftの製品なので、Office関連のクラウドサービス(Teams、OneDrive、Outlookなど)を自動化するテンプレートが充実している点もポイントです。既存のテンプレートを使えばあっという間に自動化のフロー(業務の流れ)が完成するため、初めて体験する方は「え、もうできたの?」と驚くこと間違いなしです。

業務自動化は「計画」「設計」がイノチ

あまりにかんたんにフローを作成できるので、慣れてくると「何でもPower Automateで自動化しよう」という考えになりがちです。しかし、このような意識だと「自動化のための自動化」になってしまい、かえって煩わしい業務が増えてしまうケースもあります。

つまり、Power Automateでフローを作成する前に、自動化の範囲や目的を明確にしておくことが重要。これには、対象業務の流れや優先度を整理するといった「ビジネススキル」が求められます。言うなれば、フロー作成の操作よりもむしろ、その前段階で行う「計画」⁠設計」で使いこなしの差が出てくるのです。

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 本書では自動化を行うにあたって「クラウドフロー作成の5つのステップ」を推奨し、特に重要な「計画」⁠設計」ステップについて詳しく解説している(図はP.53より引用⁠⁠。

「計画」⁠設計」ステップでは、以下のような観点で自動化の方法を検討していきます。

「計画」
①シゴトを「一連の流れ」として「見える化」する
②自動化したい業務を「言語化」する(自動化の効果を言葉で整理する)
③自動化したい業務の「優先順位」を決める
「設計」
④クラウドフローで自動化する範囲を決める
⑤利用するサービスの組み合わせを決める
⑥業務の「プロセス」と「データ」の関係性を明確化する

本稿ですべてを取り上げるのは難しいので、ここでは「計画」の①についてちょっとだけご紹介しましょう。

①シゴトを「一連の流れ」として「見える化」する

「計画」ステップではまず、各自が実行している業務を「一連の流れ」として「見える化」します。これによって、ヒトの判断に依存する部分がどこにあるかを明確にし、自動化できる部分と自動化できない部分を定めることができます。

まずは、自動化したい作業の手順を思い出し、一つひとつのプロセスを順序どおり図に描いて整理してみましょう。BPMN(業務プロセスの定義や描画法に関する国際標準)で定義された記号を使って記述することもできますが、目的は、各自が実行している業務を「一連の流れ」として「見える化」することなので、次の図のように組織やチームで理解しやすい方法でまとめてもよいでしょう。

画像②.png  業務の一連の流れを「見える化」したフロー図の例。組織内で記号を統一しておくことが重要なので、もちろん他の記号を使っても問題ない(図はP.55より引用⁠⁠。

図を使ってシゴトを一連の流れとして「見える化」すると、同じチームで一緒にシゴトをしていても、ヒトによってモノゴトを捉える粒度、思考の粒度が異なることがわかります。各自が実行しているコトを一連の流れとして捉えると、お互いの認識の違いを見つけやすくなります。

粒度の差は、異なる解釈を生み、プロセスの過不足や問題を発生させます。粒度を揃え、プロセスの過不足を顕在化させることが、組織の問題や課題を改善する第一歩になるのです。

業務自動化はココから始めよう!

残りのステップ(②~⑥)について気になった方は、『Power Automate快速仕事術――業務自動化の「計画」⁠設計」からCopilot活用まで』をぜひお手にとってみてください。

本書では、これらの観点を実際のフローに落とし込む方法までしっかり紹介しています。もちろん、Power Automateの操作方法についても、キホンから手順を追って解説しているのでご心配なく。⁠ITスキル(Power Automateの操作⁠⁠」と「ビジネススキル(業務の理解・整理能力⁠⁠」の基礎が一冊で身につく書籍になっています。

本書がみなさまの「めんどくさい」を解消する、業務自動化の確かなスタート地点となることを願っております。

藤本広大(ふじもとこうだい)

技術評論社書籍編集部所属。『⁠パワーポイント・デザインブック 伝わるビジュアルをつくる考え方と技術のすべて』のほか、『⁠一気にビギナー卒業! 動画でわかるAfter Effects教室⁠』⁠、『⁠SNSマーケティングはじめの一歩』などを担当。