ビジネスのあらゆるシーンにおいてITが使われるようになってきている現代、ITの専門職ではないビジネスパーソンにも、一定のIT知識が求められるようになりました。「デジタル前提に、ビジネスを変革する=DX」を重要な経営課題として取り組む企業も、年々増加の一途を辿っています。しかし、充分な理解のないままにDXなどに取り組んでしまうと、思わぬ失敗が待っているかもしれません。
1.関係者間で思い浮かべる目標が異なっている
たとえば、会社の目標として「デジタル化を推進する」を掲げたとします。しかし、「デジタル化」にも、「デジタイゼーション(Digitization)」と「デジタライゼーション(Digitalization)」という、2つの区別が存在することをご存知でしょうか。
「デジタイゼーション」とは、「既存のビジネスプロセスの改善」を目標として、「10日間の納期を5日に短縮する」など目標値を定め、持続的な成長を支えるためのデジタル化です。一方で「デジタライゼーション」とは、「既存のビジネスモデルの破壊」を目指して、新たな顧客価値を創出するべく、試行錯誤を繰り返すためのデジタル化です。
英語では「Digitization」「Digitalization」と明確に区別をしているものの、日本語ではひとまとめに「デジタル化」と呼ばれてしまいます。しかし、デジタル化推進に取り組む社員それぞれが思い浮かべる目標が違ったりしては、そのプロジェクトは失敗してしまいます。
2.新テクノロジーに安易に飛びついてしまう
「話題の生成AIを使えば、生産性爆上がり?」
華々しく世間に登場したテクノロジーを見て、「それさえ使えばなんでも解決できる」と錯覚する。そして、「課題を解決するための手段」としてテクノロジーを検討していたはずが、いつしか「とにかくテクノロジーを使うことが目的」になってしまう。しかし、すべての課題を綺麗さっぱり解消する、なんの欠点もない「魔法の杖」は存在しません。たとえば生成AIには「事実に基づかない虚偽の情報を生成してしまう=ハルシネーション」という課題が残されていることなどは、よく知られています。
DXにおいてまず大事なのは、経営課題に真摯に向き合うことです。テクノロジーはあくまでそれを解決するための一手段に過ぎず、盲目的になりすぎずに、その現状は正しく把握しておかなければなりません。
3.「自分の業務/業界には関係ないから、分からないから」とITを敬遠してしまう
膨大、かつむずかしく見えるIT用語を前に、キャッチアップするのを最初から諦めて、自ら遠ざけてしまう方も居るかもしれません。しかし、私たちの日常にITが深く浸透する今、ビジネスをしようとするのであれば、ITから逃れることはできません。
だからといって、ITの専門家レベルまで、知識を身に付ける必要はありません。「常識レベル」のIT知識があれば、全体を広く見回すことができるようになります。そして「デジタル化」や「DX」についてもその本質を押さえておけば、そうして得たIT知識をどうビジネスに活かすべきかも、自ずと見えてくるはずです。
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