プロジェクトの主役は人
たとえば、あるサーバーを買うとしましょう。まったく同じ製品ならば、100万円で買っても90万円で買っても、同じモノですよね。90万円にディスカウントしたからといって、品質が落ちることはありませんし、もしそんな品質コントロールをするくらいなら、そのメーカーはかえってコストが上がってしまいます。
一方、人の価格を下げようとすると「単価で調整する」か「時間で調整する」かになります。しかし、減らしすぎると、優秀な人材が確保できなくなるか(単価で調整)、やれることが少なくなります(時間で調整)。
結局、システム開発のプロジェクトにおいて、主役は人です。まず予算を極力人に振れるようにしなければ、成功するはずのプロジェクトも失敗してしまいます。
コスパのいいシステムを作るために工夫したい13のポイント
では、人の予算を削らずに、全体のコストを最適化するにはどんなことに気をつければいいでしょうか。ポイントは以下の13個です。
- ① 予算をしっかり確保する
- ② 製品を安く買う
- ③ 開発費を減らす(余計に作らない、内製化する、契約を工夫する)
- ④ 可用性、性能、運用性を考慮してインフラを設計する
- ⑤ OSSを適材適所で利用する
- ⑥ 標準化する
- ⑦ 運用・保守を効率化する
- ⑧ 人の能力を高められるよう教育する
- ⑨ サーバー(CPU、メモリ)の費用対効果を最適化する
- ⑩ 仮想化でリソースを効率的に扱う
- ⑪ ストレージを効率的に使い切る
- ⑫ ミドルウェアを有効活用する
- ⑬ システムのパターンをふまえてコストパフォーマンスを最適化する
技術力はもちろん大事ですが、それだけでうまくいくわけではありません。会社という枠組みがある以上、まずは予算のことから考える必要があります。また、基本的にハードウェアの単価が下がっていく中、コスト削減のためには必要な分だけを容易に追加できるようにすることが必要ですが、そのためには手続きも容易にしていかなければなりません。「内製化を検討する」といった、組織としての対応が不可欠な課題もあります。インフラエンジニアやアプリケーションエンジニアだけでなく、幅広い関係者の協働が不可欠なのです。
これらのポイントについて具体的にどうすればいいかを体系化したのが、新刊『コスパのいいシステムの作り方』。クラウドのコンセプト、インフラ設計、ミッションクリティカルシステムやスパコン・HPC(High Performance Computing)の大規模な計算システムまで経験したベテランのインフラアーキテクト、プロジェクトマネージャである南大輔さんが、そのノウハウをあますことなくまとめてくださっています。電子版も同時発売です。