2050年までに200ヶ国進出を目論む弁護士集団の想い

「アプリビジネス成功への法務戦略」(GVA法律事務所 著)を執筆した橘 大地さんにお話をお伺いします。さっそくですが、経歴を教えてください。

わたしは、弁護士としてベンチャー企業に対して総合的なリーガル(法務)サービスを提供しているGVA法律事務所(事務所所在地:東京都新宿区)に所属するほか、株式会社アップランドというアプリ提供会社の社外監査役として活動しています。元々「Amebaブログ」「アメーバピグ⁠⁠、最近ではトークライブアプリ「7gogo」などをリリースしている株式会社サイバーエージェントの社内弁護士として勤務していたこともあり、弁護士としてのキャリアははじめからインターネット関連にどっぷり浸かっています。恐らくこのようなキャリアの弁護士は、弁護士の歴史の中でもまれだと思います。

現在はどんな仕事をしていますか。

現在は、事務所の理念でもある「世界中の挑戦者を支えるインフラになる」べく、単身シンガポールに渡り、常駐で同事務所のシンガポールオフィスで執務しています。

海外提携先事務所との会食場所にて
海外提携先事務所との会食場所にて
世界へ進出するアプリを日本ではなく現地でサポートするわけですね。では、そういった世界進出を試みるアプリ制作企業からの要望で多いものは何ですか?

最も多いのは、ビジネスモデルが法的に問題ないかのリーガルチェックの依頼です。特に最近では、企業がユーザに何かを販売するようなモデルではなく、ユーザ同士での取引の場(プラットフォーム)を提供するケースが増えてきています。そのため、ユーザ間の金銭授受の決済や金融商品の取扱いといった法規制に留意する必要があるビジネスは増加しています。広いくくりでは、ユーザ間で仕事を発注するクラウドソーシングや、ユーザから資金調達するクラウドファンディングなどが代表例です。今回執筆した書籍では、最新のビジネスモデル別に、事例とあわせて留意するべき規制や法律にも触れています。

法規制というと企業活動を取り締まることになると思うのですが、アプリビジネスがスケールする際のブレーキにならないのでしょうか。

法規制から逃れることを主眼として、元のサービスの優位性自体を殺してしまう弁護士もよくいると聞いています。このようなことがないよう、そのサービスの優位性を見極め、マネタイズのしくみ自体を経営者に提案し、経営者と二人三脚で、自ら責任を取る覚悟で業務にあたっています。そのための努力として、アプリのグロス売上ランキングTOP100のアプリはほとんどやっています。おそらく弁護士の中で最もやっている自負があります。

それはすごいですね。アプリビジネスの視点と法務視点をあわせ持つ弁護士は少ないんじゃないかと思います。まして、日本発のゲームアプリなどはアジアをはじめ世界的に売上を伸ばしていると聞きます。今後は世界進出を視野に入れた法務サポートが必要ですね。

GVA法律事務所としては、⁠挑戦者を支えるためのインフラになる」ことを理念とし、そのための手段として2050年までに200ヶ国の地域(=全世界の意)に展開する計画を立てています。これは単なる青写真ではなく、本当に達成することを前提とした具体的な目標値です。

アプリ制作者向けイベントにて
アプリ制作者向けイベントにて
さいごに読者、アプリ制作者に関わる方と言っても良いと思いますが、メッセージをお願いします。

自分自身、挑戦していくことが生き甲斐です。アプリ制作者が世界へ挑戦していくときの障害は、規制による障害、慣習や言語の壁、もちろん、金銭的事情も現実としてあります。仮に挑戦者が世界中のどの地域に行く際にも、GVA法律事務所の弁護士がいたとすれば、その弁護士が現地の行政庁や企業との交渉にあたることが可能であったとすれば、現地のベンチャー企業やベンチャーキャピタルを紹介し、資金調達や協業が促進されたとすれば。わたしは、企業が世界進出する際の障害に一緒に挑戦して越えていく、豊かな未来を強く強く思い描いています。このような世界全体でのイコールオポチュニティ(均等機会)を現実にするために、残りの寿命を有効活用していきたいと考えています。

寿命ですか!これはアプリを成功させる強力なサポートが期待できますね。今回の書籍にも熱い想いが込められていると感じます。どうもありがとうございました。