書評サイトHONZを筆頭に好評を博す本書。まだご存じない方は、ぜひ本書タイトルで検索をかけてほしい。「鳥類学者が無謀にも恐竜について語った本」の内容がどのようなものであるか、お分かり頂けると思う。
先日、とある読者の方から「どうしてこんな本を作ったのですか?」という質問を受けた。普段、このコーナーでは書籍内容の紹介をするのだが、せっかくなので本書が作られるまでの過程をお話したい。
本書の元々の発端は、「鳥類の進化史」という企画。この内容で執筆を何人かの鳥類学者にあたってみたが、見事に全滅。全員に「古代鳥は研究範疇ではない」と言われてしまった。研究者の間には、自分の研究分野外は犯すべからず、という不文律っぽいものがあり、専門外について述べることを極度に嫌う。国内の鳥類学者のほとんどは現生鳥を研究しているので、専門外の古代鳥について書くことは越権行為なのだ。
まいったなー、と鬱々していたある日、こんな雑談をする機会に恵まれる。
- 「鳥って恐竜の子孫なんだよね。すると、鳥類学者って恐竜学者でない?」
なるほど。この理論だと、鳥類学者が恐竜を語っても研究対象だから全く問題はない。恐竜を通して鳥類の進化を見ることもできるし、いけるじゃん! しかし、こんな強引な理論にのってくれる学者っているんかいな……。それが、いたのだ。本書の著者となった川上和人さんである。
- 「いいですね~、そういう強引なの。やりましょう、やりましょう」
見事なまでのノリっぷり。恐竜は専門外ということは認めつつ、「現生恐竜学者ということで書くと楽しそうだし」。すごい、すごいよ、川上さん。
こうした経緯を経て出来たのが『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』である。制作時は、川上さんのノリに引っ張られ、携わった者全員がずっとハイテンション。おかげで、既存の科学書と一線を画す、画期的な書籍を世に送り出すことが出来た。
この経緯を知った上で本書をお読み頂ければ、よりいっそう楽しんでもらえるだろう。