「ソフトウェアテストセミナー」レポート

#4国産ソフトの海外テストを 成功に導く5つの秘訣

車載CE機器の海外テストを実施

日本オープンシステムズ
システム検証部 EPシステム検証グループ
グループ長 栗俣 一郎 氏
日本オープンシステムズ システム検証部 EPシステム検証グループ グループ長 栗俣 一郎 氏

栗俣氏は、日本オープンシステムズが北米およびメキシコ向けに開発した車載CE機器の海外テストを行うため、2008年4月から10月にかけて現地へ赴きました。システムの搭載する行き先、目的地への誘導、音楽/ビデオ再生、画像表示などといった機能が想定した仕様どおり稼働することを、現地の環境で、現地のデータを使用して、現地の人の視点に耳を傾けながら検証するのが目的でした。

プロジェクトの概要

まず4月から5月にかけての1ヶ月は、ニューヨークで道路を実走行して評価。GPS機能を持った携帯電話を日本から持ち込み、コースを確認しながら、Google Earth画像の上にGPS情報を付加していくという方法を取ったといいます。

その後ワシントンへ移り10月まで机上評価を行いました。プロジェクト体制としては、栗俣氏が現地検証プロジェクトリーダーを務め、日本からは1ヶ月ごとに交代する技術サポートスタッフを含めて全3名。現地ビジネスパートナーのプロジェクトマネジャーは中国人で、他のメンバー6名は中国系アメリカ人の多い混成チームでした。

海外テストにおける重要ポイント

栗俣氏が海外テストを行う上で感じた壁は、言葉の壁 、13時間もある時差を含めた文化の違い、食事、習慣の違いなどによる苦労があり、そこから海外テストのポイントを学んだといいます。

まずは現地拠点の確保です。現地に活動拠点を持たない同社にとって、信頼のおける現地ビジネスパートナーとの出会いがなければ、検証の実施は困難でした。

外国ビジネスパートナーとの契約業務も困難を伴いましたが、これは社内外の法務関係者との連携、および現地弁護士との連携で乗り切りました。

社内規定の限界も感じました。海外で仕事を進めるための規定が未整備であったため、栗俣氏はときにトップに直接掛け合って了解を取り付けたといいます。

外国ビジネスパートナーとのコミュニケーションも大変でした。これはブリッジSEを採用し、英語を的確に話せる人の協力を仰ぐとともに、機械翻訳、身振り手振り、ホワイトボードに絵を描くなど、伝える意志を持ち⁠使えるものはすべて使う⁠意気込みで取り組みました。

プロジェクトも日本でのようには立ち上がらず、必要な構成メンバーが予定どおり揃わなかったり、なかなか契約が締結しなかったりしました。また、実走行での評価が終わって、すぐに机上評価へ入ったため、モチベーションの維持が困難な面がありました。

現地顧客の要望も⁠やわらかくタイト⁠で、出国前は繰り返し見積もり作業に追われました。締め切りが迫る中で、現場のプロジェクトマネジャーとその上長のダブルタッグでサポートを受け乗り切ったのです。

メンバー間の協力も重要で、ホテルでの合宿生活かと思えるほどに、プロジェクトマネジャーやサブリーダーと密接に連携を取ることに気を配り、定期的に会議を計画して伝える場を持つようにしました。

経費管理も日本のようには行きません。クレジットカード決済なのですが、経費支出処理のため支払いは遅くなります。資金繰りが滞り、あわや支払い遅延という場面もありました。

心身のコンディション維持も忘れてはならないポイントです。 週末には同じ時間に同じことをすることでリフレッシュ。また家族とのコミュニケーション、部門長、本部長からモーニングコール・おやすみコールで孤立感を持たなかったのもよかったようです。

加えて、整理やストレスの落ち着き先が必要、と、プロジェクトが一区切りつくと懇談の場を設け自由に話す機会を作りました。

 

このプロジェクトから学んだこと

今から振り返ると、当初壁と感じたものは実際は大して壁ではなかった、と、栗俣氏は語ります。 ⁠今回のプロジェクトで、たとえ国は違っても検証プロセスという共通言語、理解の地平は存在することがわかりました。結局、組織へ血を通わせるのはコミュニケーションで、ツールや技法ではなく、人こそが品質を作るのです」⁠栗俣氏)

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