もっともMicrosoftはナデラ氏のCEO就任にともない、社内に存在していた多くの製品プロジェクトを中止、または組織を変更し、同じような技術を基盤とするオープンソースプロジェクトへの投資に切り換えてきた経緯があり、並列分散処理基盤の「Dryad」やソースコード管理製品の「Team Foundation Server」などはその代表です。したがって、GitHubとのポートフォリオ統合においても、ユーザの希望を最大限尊重するかたちで進められることが期待されます。
筆者は昨年、サンフランシスコで開催されたGitHubの年次カンファレン「Universe 2018」に参加したのですが、その際、MicrosoftのVisual Studio Team Services プログラムマネージャ(当時)のエドワード・トムソン(Edward Thomson)氏がセッションで「オープンソースはゼロサムゲームではない」と語っていたことが強く印象に残っています。オープンソースもオープンソースビジネスも、誰かが何かを得れば、もう一方が何かを失うような類のものではなく、ミッションを同じくするチームがコラボレートすることで新しいイノベーションを生み出していく ―世界最大級のクラウド&ソフトウェアカンパニーと、世界最大のコラボレーションプラットフォーマーがひとつになることで、どんなシナジーが生まれるのか、世界中のユーザが大きな期待といくばくかの不安をもって見つめています。
「Universe 2018」でセッション中のエドワード・トムソン氏。もとGitHubの中のひとでMSに転職、そしてまたGitHubのメンバーと一緒に仕事をすることにトムソン氏による“Open Source is NOT a zero-sum game.”のスライド。映画「ウォー・ゲーム」の有名な画面ですね。