朝晩もずいぶん冷え込んで、いよいよ今年もこたつの準備に取り掛かろうとしている今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいウェブサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。
Twitterも、課金開始します
Twitter初のサブスクリプションサービスとして提供が開始された「Twitter Blue」の詳細を知らせるTwitter公式Blogのエントリー、「 Introducing Twitter Blue」です。
図1 Twitter初のサブスクリプションサービス「Twitter Blue」の詳細を説明するTwitter公式Blog「Introducing Twitter Blue」
エントリーでは、Twitterが今回発表した「Twitter Blue」で可能な新機能の説明とサービス提供までの経緯が説明されています。
「Twitter Blue」で提供される新機能は、Bookmark Folders(保存したツイートをフォルダー管理) 、Undo Tweet(ツイート公開前の内容修正、投稿後30秒以内の取り消し) 、Reader Mode(スレッドを読みやすい長い文章として表示)の3つです。それ以外にビジュアルのカスタマイズやメンバー専用のカスタマーサポートも追加されます。
図2 「 Twitter Blue」で提供される新機能の一つ、Undo Tweetの画面写真。設定した時間(最大30秒)内であれば、送信したツイートや返信などを投稿前に取り消せる
※Introducing Twitter Blue より引用
オーストラリアとカナダのTwitter for iOSで先行提供される「Twitter Blue」の月額料金は、オーストラリアでは4.49AUドル(約376円) 、カナダでは3.49CAドル(約318円)となっています。また11月9日からはアメリカとニュージーランドでもサービスが提供されます。
新たな収入源の獲得を目指すTwitter
Twitterでは、このところ新たな機能を発表して試験的に運用する動きが活発です。今回発表された「Twitter Blue」も、ユーザーの課金によって機能が追加できるという、今までやったことのない方法を試みています。
スピード感ある試みが次々と行われている理由には、今年2月に「Twitter Analyst Day 2021」で発表された、今後のTwitterの経営目標が考えられます。
「視聴者を増やし、ブランド広告とダイレクト・レスポンス広告の両方でシェアを獲得して、2023年には年間の総収入を75億ドル以上にする」と宣言したTwitterの公式IRによるツイート
この目標は「2020年と比較して、2023年までに年間の収益額を2倍にする」というものです。目標達成には、現在の主な収入源である広告収入のほかに、より安定的で確実に計上できる収益源が必要です。このため「Twitter Blue」が導入されるのは必然とも言えます。
10月26日に発表したTwitterの第3四半期決算 では、「 AppleのiOSのプライバシー規約変更によるモバイル事業の広告売上への影響は小さい」ことを発表しました。広告収入に関する懸念が少なくなったことで、新たな収入源への投資にも集中できそうです。
今後はユーザーの滞在時間と利用頻度を拡大する「Ticketed Spaces」( チケット販売できる共有音声会話) 、「 SUPER FOLLOW」( 月額課金でクリエイターを支援) 、「 Tips」( ユーザーに投げ銭できる)といった機能を活用しながら、野心的な目標に向かって収益を伸ばしてくるはずです。
2013年11月に株式を公開してから8年。Twitterはユーザー数の増加を最優先とする成長局面から、新たな収入源を獲得しながら安定的な経営を目指す段階に入っています。「 広告の非表示」や「定額制ニュースの配信」の実施という噂もありますし、次の一手としてどのようなサービスや機能を発表してくるのか、これからのTwitterの動きにも注目したいです。
ファンほどお得なポイント制度
ファストフードチェーンのMcDonald'sがアメリカで開始したポイント還元ロイヤリティ・プログラム、「 MyMcDonald's Rewards」を紹介した『MyMcDonald's® Rewards: Get Free Food & Deals』です。
図3 『 MyMcDonald's® Rewards: Get Free Food & Deals』では、全米の店舗でMcDonald'sが開始したポイント還元ロイヤリティプログラム「MyMcDonald's Rewards」を紹介している
ユーザーはMcDonald'sのアプリから「MyMcDonald's Rewards」を利用します。商品を購入すると1USドルの支払いに対して100ポイントが加算され、ポイントが1,500ポイント以上貯まればマクドナルドの商品と無料で交換できます。
図4 「 MyMcDonald's Rewards」でポイント交換できる商品は、1,500、3,000、4,500、6,000ポイントの4段階に分かれている
アメリカの外食産業が自社サービスのアプリに注力する理由
アメリカの外食産業では、すでに多くの企業がポイントプログラムを導入しています。McDonald'sと同業でライバルでもあるチキンサンドチェーンのChick-fil-Aの場合、「 Chick-fil-A One」というポイントプログラムで会員のランク付けがされています。
図5 Chick-fil-Aのポイントプログラム「Chick-fil-A One」 。ランクによって付与されるポイント数が増える(最大3割)だけでなく、提供されるサービスも異なる
ランクが上がると付与されるポイント数が増えていくため、商品を頻繁に購入するユーザーほど多くのサービスか受けられる仕組みです。購入するほどランクが上がり、ポイントも貯まりやすくなるという仕組みも、ヘビーユーザーを囲い込んでしまおうという思惑が感じられます。
コロナ禍でも安定して売上を伸ばしているMcDonald'sですが、さらにアプリを利用したポイントプログラムを刷新したのはなぜでしょうか。その理由は、「 MyMcDonald's Rewards」の利用方法から推測できます。
「MyMcDonald's Rewards」でポイントを獲得するには、スマートフォンからMcDonald'sのアプリを立ち上げて表示されるQRコードを、商品の購入時(モバイル・オーダーや店内のレジ、ドライブスルーなど)に必ず提示しなければなりません。つまり、ポイント獲得によって個人の購入データをアプリに紐付けることで、詳細な顧客の購入情報を獲得できるのです。
図6 「 MyMcDonald's Rewards」でポイントを貯める方法の説明。アプリで「ポイントを貯める」を選択後に表示される4桁のコードを店舗やドライブスルーの注文時に使用する
現在、スマートフォンのような個人と密接なつながりを持つ情報端末から、企業が詳細な個人情報を許可なしに取得するのは難しい流れになっています。また個人情報の利用をユーザーに許可してもらうには、それなりの見返りが必要です。
「MyMcDonald's Rewards」は無料サービスを提供することで、アプリを通じてユーザーの個人情報を獲得しています。頻繁に商品を購入するユーザーの情報は、企業にとって欠かせません。アプリを通して個人に適合した商品やサービス、クーポンなどの情報も通知できるため、費用対効果にも優れています。
個人情報がさらに獲得しにくくなることを考えれば、多くの企業がユーザーの個人情報取得のために、自社サービスに直結したアプリを利用する事例が増えるでしょう。情報を提供する顧客側にもメリットがあることから、今後も双方にとってメリットのある方法が拡大していきそうです。
よみがえる、失われた絵画の姿
オランダ・アムステルダム国立美術館の修復プロジェクト「Operatie Nachtwacht」によって再現されたレンブラントの『夜警』を解説したウェブサイト、『 Missing pieces of The Night Watch(夜警の失われた断片) 』です。
図7 アムステルダム国立美術館の修復プロジェクトによって再現されたレンブラントの『夜警』を解説した『Missing pieces of The Night Watch(夜警の失われた断片) 』
オランダの画家レンブラント・ファン・レインの代表作でもある『夜警』は、1975年にアムステルダム市庁舎へと移設される際、設置する場所の問題から、作品の一部が切り取られてしまいます。この際に切り取られた部分は現在も発見されていないため、修復プロジェクトでは同時代のオランダの画家Gerrit Lundensが残した『夜警』の模写と、人工知能を用いたレンブラントの筆致の再現を行うことで、1715年以前の『夜警』を現代に蘇らせました。
『Missing pieces of The Night Watch』では、1715年以前と現存する『夜警』とを比較して出現した異なる部分について解説しています。表示された7つのアイコンをクリックすると表示される拡大画像によって、絵画の違いが確認できます。
図8 1715年以前と現存する『夜警』のヘルメット部分に関する説明。2つの画像が拡大表示されて左右に並ぶため、異なる点が比較しやすい
実際に復元した切断部分は、印刷された後に『夜警』の周囲に設置して、アムステルダム国立美術館で特別公開されます。
日々進歩する修復技術から生まれるもの
2019年にアムステルダム国立美術館が開始した「The Night Watch」は、レンブラントの『夜警』を研究・保存するプロジェクトです。美術館内で公開されながら進められている修復作業によって、これまでも『夜警』に関する多くのデータが公表されてきました。
修復作業の基本データとして最初に絵画から収集したのが、絵画自体をさまざまな機器を使ってスキャンすることでした。中でもレンブラントの筆致だけでなく、ひび割れなどの経年変化によるダメージ情報を含んだ超高画質の画像データはウェブサイトでも公開 されており、今回の絵画復元でも非常に重要な役割を果たしています。
図9 公開されている『夜警』の超高画質画像。撮影された528枚の画像からニューラルネットワークを用いて44.8ギガピクセルの画像を作り上げている。拡大時には筆使いや絵の具のひび割れも確認できる
ドイツ・ドレスデン美術館によるフェルメールの『窓辺で手紙を読む女』の修復・研究プロジェクトでも、アムステルダム国立美術館の支援が行われました。実施された検査では「背景の上塗り部分がフェルメール自身によるものではない」ことが判明。今年8月には、上塗り層を取り除く修復作業が完了して、作品が公開されました。
図10 ドレスデン美術館による、フェルメール『窓辺で手紙を読む女』修復完了のお知らせ。塗りつぶされていた裸のキューピッド像が作品の背景に浮かび上がっているのがわかる
『夜警』の事例でも用いられた数々の検査方法と人工知能による修復作業は、今後の主流となるかもしれません。いずれにしても、日々確実に進歩している技術によって、絵画の本当の姿を見られる機会が増え、これからも新たな発見や感動が生まれることでしょう。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。