著作権者の皆様へ 米国Google社のブック検索について

著作権者の皆様へ
米国Google社のブック検索について

 すでにご承知のことと存じますが、米国Google社は、米国内の図書館などに所蔵されている書籍をスキャンしてデータ化し、これらの公開を目指したために米国の著述家協会および出版社協会と裁判となり、争った結果、現在、裁判所からの金銭による和解の決定を待っている状態にあります(決定のための最終審理は2009年10月7日に行われる予定です)。この決定が行われると、和解の対象は米国において出版された書籍にとどまらず、世界的な著作権の保証の枠組みであるベルヌ条約に加盟している国々において出版された書籍も、すべて自動的に含まれることになります。つまり、日本において出版された書籍も、米国Google社によってデータ化されたものは、今後、ネット上で公開されてしまう可能性があるということです。
 米国Google社は、すでに700万冊を超える書籍のデータ化を行ったと言っています。また、そのデータベースにアクセスし、検索することにより、Google社が「権利者」と見なしている著作権者および出版社は、自身に関わりのある書籍のどれがリストに載っているかを確認することができます。
 上記手続きに従って弊社でも自社出版物のデータ化状況を調査いたしましたが、すでに絶版になっているタイトルも含めて膨大な数の書籍がリストに掲げられていることを確認いたしました(今回の「和解」の対象となっているのは、2009年1月5日までに発行された書籍です)。
 当初、和解拒否の通告期限が2009年5月5日とされていたことから、弊社では取り急ぎお知らせの準備を進めたところでありますが、期限目前になって約4カ月の延期が確定しましたので、再度リストを見直し、精度を高めた上で通知の作業に移行することといたしました。それに伴い、お知らせが今日まで延びてしまいましたことを、ここにお詫び申し上げます。

 対応策は大きく2つに分けられます。

  (1) 今回の米国での和解に参加する
  (2) 今回の米国での和解に参加しない

 以下、それぞれの場合に何が起こり、著作権者(著者)はどのような行動をとらなければならないか、かいつまんでご説明いたします。

《1.今回の米国での和解に参加する》
 2009年9月4日までに何のアクションも起こさず、放置しますと、自動的に「和解」を選択したことになります。この場合、後から米国Google社に次のことを要求できる権利が残ります。

  (a) 特定の書籍を表示使用から除外させる
  (b) 特定の書籍を米国Google社のデータベースから完全に削除させる

 (a)は、当該書籍のデータが米国Google社のデータベースには残りますが、それを不特定多数に公開することをやめさせるものです。この手続きは、和解に参加した権利者であれば、いつでも取れます。
 (b)は、当該書籍のデータそのものを米国Google社のデータベースから完全に削除させるものです。この手続きには有効期限があり、2011年4月5日までに米国Google社に対して通知を行わなければなりません。
 さらに、上記(a)(b)いずれを選択するにせよ、今回の「和解」以前に米国Google社が無許可で書籍のデジタル化を行ったことの代償として、1タイトルあたり最低60ドル(U.S.$)の対価を得る権利も残ることになります(対象書籍の状況〔絶版か否かなど〕に応じて金額は変動しますが、これは現金で支払われることになっています)。請求期限は、2010年1月5日です。

《2.今回の米国での和解に参加しない》
 これは、今回の「和解」に参加せず、異議申し立てを行う場合の選択肢です。和解への参加の拒否を、2009年9月4日までに通知しなければなりません。そのためのフォームは、Googleのホームページ(http://www.googlebooksettlement.com/r/home)に掲載されています。
 これを選んだ場合、米国Google社が勝手に書籍内容をデジタル化したことに対する代償(最低60ドル)を得る権利は失われます。
 さらに、これを選んだことで、米国Google社が対象書籍のスキャン(データ化)をやめたり、抜粋表示を行ったりしないという保証は、どこにもありません。万一そのような事実が発覚したとして、それに対しては米国において別途訴訟を起こすという方法もありますが、現実的ではないと思われます。

 以上、概要をご説明いたしました。著作権法によれば、米国Google社が何と言おうとも、最終的な権利者は著作権者ということになります。したがいまして、今回の件につきましては、著作権者ご自身に態度をお決めいただかなければなりません。選択可能な対応策は、上記2つのいずれか、ということになります。ただし、総合的に判断しまして、米国において自ら訴訟を起こすなどといった煩雑な手続きが発生することもあり、当社といたしましては、現状、この(2)の選択はお勧めいたしかねます(もちろん、お選びになるのは自由です)。
 ご参考までに、日本文芸家協会は、当初は会員に対して「和解してデータベースからデータを削除させる」ことを推奨していましたが、その後は「和解してデータを非表示にさせる」ことを推奨するようになっております。
 繰り返しになりますが、上記(1)を選択なさる場合には、特に何の手続きも必要ありません。一方、(2)を選択なさる場合には、下記ホームページからご自身で手続きを行っていただくことになります(それが難しい場合には、どうぞ担当編集者にご相談ください)。

  http://www.googlebooksettlement.com/r/home

 もともとは米国内でのフェアー・ユース(図書館における書籍の閲覧のような、著作物に関し正当利用と見なされている利用形態;ただし、これは日本国内においては未だ明確に規定されていません)から発展したサービスということもあり、正式なサービスの開始後も、無条件で全内容が公開される書籍は「絶版」と認められるタイトルのみとアナウンスされております。絶版の定義は、当初は「米国内の既存の書籍販売ルートで普通に入手することができないもの」とされ、それゆえ日本で発行された書籍の大半は絶版扱いされることになるのではないかと思われましたが、その後、この規定についてはGoogle社および米国出版協会などでも見直しが行われ、新たに「日本で流通していないもの」との項目が追加されました。したがいまして、最新の定義では、日本において絶版となった著作物がGoogle社による公開の対象となる、と考えられることになります。
 以上の点につきまして、ぜひとも冷静なご判断をお願いいたしたく存じます。

2009年7月31日

                  株式会社 技術評論社