生成AIアプリ開発大全――Difyの探求と実践活用

著者の一言

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生成AIの進化,目まぐるしいですよね。ChatGPTが登場してからたった2年。その間,指数関数的な勢いで成長し,今や私たちの日常やビジネスに深く根付いています。

私たちは今,シンギュラリティ(技術的特異点)という未知の領域に着々と近づいています。もしかすると,その一歩を人知れず踏み出しているのかもしれません。

「AI って魔法みたいですごいけど,自分は使いこなせているのかな……」

そんな声が聞こえてきそうです。確かに,アーサー・C・クラークの言う「十分に発達した科学技術は,魔法と見分けがつかない」という言葉が,今ほど身に染みる時代はありません。ならいっそのこと,そんな「魔法」を使えるようになってみませんか? AI をもっと使いこなしたり,自分だけのAIアプリを作ったり。そんな力を,誰もが手に入れられるようになる。それが,この本の目的です。

そこで登場するのが,Difyという燻銀のようなツールです。⁠AIの魔法の杖」と言ってもいいかもしれません。これまでAIアプリの開発には,PythonやJavaScriptなどのプログラミング言語のスキルが必要でした。プログラミングができても,設計から実装まで膨大な時間がかかっていました。でも,Difyがあれば,あなたのアイデアをすぐさまAIアプリとして具現化できるのです。

この本では,生成AIを実際の業務に活かすための3つの重要な概念を学びます。

  1. チャットボット:AIとの対話を通じて情報を得たり,タスクを実行したりする仕組み
  2. エージェント:特定の目的や役割を持ち,自律的にタスクを遂行するAI
  3. ワークフロー:複数のタスクや処理を連携させ,一連の流れを自動化する仕組み

難しそうに聞こえますか? ご心配なく。これらを実際にDifyを使いながら,手を動かして学んでいきます。気がつけば,自然とAI アプリ開発の基礎が身についているはずです。

本書は,こんな方々に向けて書かれています。

  • プログラミング経験がない,または少ないけれど,AIを業務に取り入れたい方
  • 会社からAI関連のアプリ開発を任されたが,どこから手をつければいいかわからない方
  • 客先にAIの提案をしたいが,プロトタイピングにコストがかかるとお悩みの方
  • ノーコードAI ツールの可能性に興味があるエンジニアの方
  • すぐにでもAI アプリを作りたいアイディア豊富な非エンジニアの方

技術的なバックグラウンドは問いません。AIアプリ開発の世界を探求したいすべての方に,段階的に理解を深められるよう工夫を凝らしています。本書の真骨頂は,⁠手を動かしながら生成AIを学ぶ」という点にあります。決してDifyの取扱説明書ではありません。各章では,具体例を通じて実践的に学習を進めます。習得した知識を積み重ね,より実用的なAIアプリケーションを作り上げていく――その過程で,生成AIを業務で使いこなすコツを体得していただきます。まるで中世の錬金術師が,究極の叡智を求めて実験を重ねたように。ふと気が付けばあなたも,独自のAIアプリを創造できるようになっているでしょう。たとえば,社内業務に自律的に対応するチャットボットを作ったり,業務フローを自動化するシステムを構築したり。可能性は無限大です。

「日本は大規模言語モデルの開発競争に乗り遅れた」なんて言われていますが,心配ありません。そもそも,その競争には最初から参加していなかったんです。諦めるより先に試合終了,というわけですね。でも,⁠AI アプリケーション開発」の世界は,まだまだこれからです。

ある有名なホッケー選手はこう言いました。

「僕はパックがあるところではなく,パックが行くところへスケートする」

AIアプリ開発も同じです。今あるものを追いかけるのではなく,これから必要とされるものを生み出すチャンス! それが,今まさに巡ってきているのです。生成AIを活用したアプリケーション開発には,十人十色の課題があり,ユースケースはほぼ無限です。私たちに必要なのは,アイデアをどう実現するか,という視点だけです。AIアプリ開発は,まさに現代の錬金術であり魔法です。あなたのアイデアこそが,新しい価値をうみ出す触媒となるはずです。生成AIという賢者の石とDifyという魔法の杖,そしてこの魔法大全を手に,さあ,アプリ開発のダンジョンへ出発です!

著者プロフィール

小野哲(おのさとし)

ソフトウェア開発歴40年を超えるプロ技術者。当社では『ソフトウェア開発にChatGPT は使えるのか?』『逆算式SQL教科書』『最新図解 データベースのすべて』『3ステップで学ぶOracle入門』などの書籍がある。そのほかに『現場で使えるSQL』(翔泳社)など。ウェブアプリからデータベースまで幅広い知見と技術を持つ。最近ではPythonでAI関連やIoT関連のシステム開発を請け負う。