『改訂第3版 すらすらと手が動くようになる SQL書き方ドリル』
(2016年4月、技術評論社)より転載
本書は、前回の改訂から10年以上が経過しての改訂3版となります。10年も経ってるのだから冒頭からいろいろと語ることがあるはずと思っていたのですが、いざ書こうとすると何も書かなくてもいいのではないか、という気持ちになるのが正直なところであり、それがSQLと、そして手前味噌ですが本書のすごいところだとあらためて感じるしだいです。
本書の第1版が世に出てからずいぶんと年月が過ぎました。当時はまったく存在しなかったスマートデバイスが今では当たり前のものとして定着し、それと呼応するようにクラウドという概念も実務で当たり前になりました。そしてNoSQLという概念が出てくるに至り、もはやRDBMSやSQLは過去のものになるかのように思われた時期もありました。
しかし現実は、NoSQLが提示したさまざまな可能性を飲み込む形でRDBMSは進化を続け、クラウドという劇的な環境変化にも対応して、これまでと変わらずまだまだデータマネジメントにおける中心的な役割を担い続けています。また一方でビッグデータという言葉が脚光を集める中で、RDBMS以外の分析基盤も多数登場してきました。そしてそれらの多くが分析用言語としてSQLを採用しています。
このような事実の数々を目の当たりにすると、SQLという言語は21世紀も中盤に差し掛かりつつある現代において、古びるどころか、ますますその存在価値を強めていると言ってもけっして過言ではないでしょう。
そんなSQLを楽しく気軽に、そして確実に習得するために生まれたのが本書です。暗記してわかったつもりになっていながら現場に入ってうろ覚えで困ってしまうのではなく、すらすらと手が動くようになってもらう。その一点のために本書はずっと工夫を積み重ねてきました。おかげさまで多くの方々に愛され続けて、実際にプロになってから非常に役だったというお声もたくさん頂戴しております。
鉛筆を持って紙に手で書いて身に染み込ませる。しかもそのときに書き順を意識することで理解度を深める。SQLの習得においてこれらの方法を世界で最初に導入した第1版に続き、改訂2版(改訂新版)では何度もPCに向かって手を動かすことができるように、反復学習用のアプリケーションSQUATを提供しました。そして今回は、クラウド時代にもこれらの手法が通用することをしっかりと検証しました。ですから本書でしっかりと学んで習得していただければ、そのスキルは一生もので役立ち続けるものだと自信を持ってお届けできます。
ITのIはインフォメーション(情報)のIです。そのインフォメーションの原単位となるデータを縦横無尽に操る、それがSQLです。そんなSQLの習得を通して、本当のITプロフェッショナルへの第一歩を踏み出してください。
2016年3月 羽生章洋