新しい年の始めに、Ubuntuで使用できるさまざまなデスクトップ環境について2024年に起こったことと2025年に起こりそうなことを紹介します。
新年のご挨拶
新年初めのRecipeも、デスクトップ環境の記事で始まることになりました。
昨年 はデスクトップ環境に関するアップデートが多かったので、そのまとめの比重が大きくなりました。ということは、今年はあまり大きなアップデートがなさそうな年であるという予想ができますが、さてどうなのでしょうか。
本年もよろしくお願いいたします。
GNOME
では本題です。GNOME は1年に2回リリースされており、昨年は46 と47 がリリースされました。特に前者はUbuntu 24.04 LTSでも採用されているので、長く使われるバージョンになることでしょう(図1 ) 。
図1 Ubuntu 24.04 LTSのGNOME 46
GNOMEデスクトップ環境自体のリリースは順調であり、また多数のアプリケーション が生まれている状況ではあるのですが、GNOME Foundation は資金難ということでコストカット を行わざるを得ない厳しい状況にあります。
KDE
KDE Plasma は昨年2月28日にMegaRelease と称してPlasma 6、Frameworks 6、Gear 24.02をリリースしました。Plasmaはデスクトップシェル、Frameworksはフレームワーク(ライブラリ) 、Gearはアプリケーション集です。そのPlasmaは12月31日(!)に6.2.5 がリリースされ、猛烈な勢いを感じます。
Kubuntu 24.04 LTSはPlasma 6を見送り、5に留まったことにより24.10が最初に使用できるPlasma 6のバージョンとなりました(図2 ) 。
図2 Kubuntu 24.10のKDE Plasma 6.1.5。正直見た目は24.04 LTS以前とあまり変わりはない
それに刺激されたのかどうかは定かではありませんが、いにしえのKDEユーザーなら記憶にあるAmarok が蘇りました。Qt/KDE4時代によく使われ、Qt/Plasma5には(あまり正確な表現ではありませんが)追随せず、Qt/Plasma6で満を持して3.0 がリリースされました。現在は3.2 までリリースされていますが、Ubuntuのリポジトリにはないため3.0のスクリーンショットが図3 です。
図3 Amarokで再生中。インストールしたのは何年ぶりか
今年もPlasma 6を始めとして開発が進んでいくことになりそうです。ただしUbuntu 24.04 LTSのリポジトリにはPlasma 6関連パッケージがないため、第823回 で紹介したghostwriterのようなKDE Gears(アプリケーション)の最新版アプリケーションがビルドできず、悩ましくもあります。そのためのsnapパッケージという考え方もありますが。
Xfce
Xfce は昨年12月15日に4.20がリリース されました。早くもXubuntu 24.10用のPPA が用意され、手軽に試すことができます(図4 ) 。
図4 Xfce 4.20にアップデートしたXubuntu 24.10
とはいえ、正直なところどこが変わったのかよくわからず、また少なくともVirtualBoxではWaylandセッションを有効にできなかったので、「 Wayland support in Xfce 4.20 is experimental.」( Xfce 4.20のWaylandサポートは実験的です)というのは本当にそうなのだなと実感しました。Xfceのような老舗のデスクトップ環境がWaylandサポートを進めるという時点で胸が熱くなります。
今年も引き続きWaylandサポートを進めていくのでしょう。
LXQt
LXQt は、昨年は2.0.0 と2.1.0 がリリースされました。Wayland FAQ によると、2.0.0はQt 6サポートがターゲットであり、Wayland対応は2.1.0以降になるとのことです。リリース時期の関係でLubuntuのLXQtは2.0.0なので、Waylandセッションはまだ試せていません。とはいえ、Lubuntu 24.04 LTSのLXQtは1.4.0だったので、24.10も充分に楽しめるリリースにはなっています。
Lubuntu 25.04開発版はLXQt 2.1になっていますが、Waylandセッション用のパッケージがまだDebianに入っておらず、Ubuntuのリポジトリにも取り込まれていないので試せません(図5 ) 。
図5 Lubuntu 25.04開発版のLXQt 2.1。ギリギリ締切に間に合った
LXQtも、やはりWaylandサポート継続的に行っていく1年になるのでしょう。
MATE
MATE は昨年2月27日に1.28がリリース されました。しかしUbuntu MATE 24.04 LTS も24.10 もMATEのバージョンは1.26のままという、ちょっと聞いたことがない事態になっています。
そんな状態なので、特段書くべきことが見当たりません。Waylandサポートを前のめりに行っているようにも見えず、他のデスクトップ環境からは少し離されたような印象です。
Cinnamon
Cinnamon は、6.2と6.4がリリースされました。いずれもWaylandサポートを強化しつつの小規模な変更となっています。
Ubuntu Cinnamonは24.10でも6.0と6.2のパッケージが混ざっている状態で、純粋な6.2あるいは6.4以降のCinnamonを使用するには25.04まで待つ必要がありそうです。
Ubuntu Cinnamonではダメでしたが、Fedora Cinnamon Spin 41のCinnamon 6.2を起動してみたところ、実用性はまったくないものの、ひとまずログイン自体は正常にできています(図6 ) 。CinnamonのWaylandサポートが進んでいることが伺えます。
図6 Fedora Cinnamon Spin 41のCinnamon 6.2でWaylandセッションにログインできている
フレーバーとしての利用
ここで紹介したデスクトップ環境は、第808回 で紹介したUbuntuのフレーバーとしてリリースされています。もし気になるデスクトップ環境があったら、こちらを参考に使用してみてください。