OSSデータベース取り取り時報

第116回日本MySQLユーザ会25周年&MySQL 30周年イベント⁠脆弱性が修正されたPostgreSQLの続報

この連載はOSSコンソーシアム データベース部会のメンバーがオープンソースデータベースの毎月の出来事をお伝えしています。

[MySQL]2025年3月の主な出来事

MySQLの歴史は1995年5月23日にバージョン1.0が内々でリリースされ、MySQL社の創業者のうちのDavidとAllanの2名がテストしていたところから始まっています。2025年は30周年の年となり、世界各地で記念イベントが開催されています。

日本のMySQLユーザー・グループである日本MySQLユーザ会(MyNA)は、1998年1月25日からメーリングリストでの情報交換が始まり、ユーザ会としては2000年3月28日に設立されました。2025年は25周年にあたります。

日本MySQLユーザ会 25周年 & MySQL 30周年イベント

3月25日にこの2つの節目の年を記念するイベントが開催されました。

MySQLの公式Xアカウントより
MySQLの公式Xアカウントより

昼と夜の二部構成で、14時から20時前まで開催されたイベントでした。昼の部はMySQLユーザ会の代表のとみたまさひろさんの講演で始まり、ユーザ会ゆかりの方々の講演やMySQL コミュニティチームや海外のMySQLサポートエンジニアからのビデオメッセージもありました。今回のイベントで特徴的だったのは、オープンソースやデータベース、MySQLやコミュニティなどを長年にわたってウォッチされてきたメディア関係の方々の講演やビデオメッセージが用意されていた点です。

この連載が掲載されているgihyo.jpの立ち上げもされた株式会社技術評論社のデジタル事業部部長である馮富久さんも登壇され、紙の雑誌とオンラインメディアとの関係性、雑誌『Software Design』でのMySQLに関する記事、馮さんが参加されたMySQL関連イベントなど、メディアの観点からMySQLやコミュニティの歴史を語っていただきました。2008年のMySQLカンファレンスのイベントのノベルティや懐かしの雑誌などもお見せいただきました。個人的には馮さんがSoftware Designでどんな特集やっていたかをmixi日記に記録されていたという話も印象的でした。ちなみに馮さんが確認できた範囲では、Software Designでの最初のMySQLの記事は馮さんの入社前の1999年1月号、MySQL単体での特集は2002年3月号だったそうです。

昼の部の模様

第二部は日本MySQLユーザ会らしいゆるっとした雰囲気となり、Oracle ACEのyoku0825さんから次世代のコミュニティメンバーに向けた期待が語られたほか、飛び入りでのライトニングトークなども行われました。

[PostgreSQL]2025年3月の主な出来事

3月はPostgreSQL本体のリリースはありませんでした。2月に2回リリースがあって修正対応されたセキュリティ脆弱性やその他の変更点の情報について、続報や詳細情報などがありましたのでお知らせします。また、セキュリティ脆弱性などの問題点対応の基本は、最新版へのアップデートでしょう。そこで、クラウドのマネージドサービス固有の情報ではありますが、PostgreSQLのアップデート手段に関する情報もお伝えします。

PostgreSQL 17.4と17.3のリリースについての詳細情報

SRA OSSから、2月20日リリースのPostgreSQL 17.4の技術情報と、その1週間前の17.3の技術情報が日本語で公開されました。

17.3のリリースではCVE-2025-1094への対応で重大な見落としがあり、17.4にて修正されたようです。17.4では、libpqのクォート付加を行うAPI関数について追加の修正が行われました。文字列の長さを指定するパラメータ処理に問題があり、不要なテキストが出力に含まれる可能性や、不正なメモリアクセスによりクラッシュを引き起こす可能性があったようです。また、無効なエンコーディングが検出された際の処理も変更されているとのこと。これらはバージョン17だけではなく、バージョン13から17までの全てのサポート中のバージョンが対象です。

詳しくはSRA OSSの技術情報を参照してください。また、1つ前の17.3などのリリースでは、上記の脆弱性修正以外の多数の変更を含んでおり、これらについても丁寧に解説されています

SQLインジェクションによってアメリカ財務省への侵入に使用

2024年の年末にアメリカ財務省で発生した侵入の事案は、前述のCVE-2025-1094の脆弱性を悪用したSQLインジェクションによって発生していたことが報告されました

簡単にまとめると、シングルクオートなどサニタイズ処理が必要な文字のエスケープ処理の問題になりますが、unicodeの複数バイト文字の場合のエスケープ処理に問題があったということのようです。なお、この脆弱性がサポート中の全バージョンが対象になっていることからわかるように、かなり以前から(報告によれば9年前から)発見されずに存在していたことも見落とせない点です。

また、別の記事によれば、アメリカ財務省で発生した件では、PostgreSQLのこの脆弱性以外にも問題があったとのことですが、PostgreSQLの脆弱性が悪用されたことは事実でしょう。

PostgreSQLのメジャーバージョンアップの方法⁠AWS版

Amazon Web Services(AWS)からAmazon RDS for PostgreSQLのローリングメジャーバージョンアップグレードにpgactiveを使用するというブログが公開されていました。

セキュリティ脆弱性を含めて発見された問題点に対応するだけなら、マイナーアップデートを適用すれば解消されることも多いのですが、メジャーバージョンがサポート切れになる場合は、新しいメジャーバージョンに移る必要があります。直近では、この連載の第112回でお知らせしたように、バージョン12が2024年11月にサポート終了になっています。

紹介した上記のブログは、pgactiveというAmazon RDS for PostgreSQL用の拡張機能を使ったメジャーバージョンアップを中心に解説した記事ですが、他の方法としてAmazon RDS ProxyやPgBouncerのようなデータベースプロキシを使用する方法などについても簡単に触れられています。

この記事で取り上げているpgactiveは、Amazon RDSでのアクティブ~アクティブレプリケーションを実現する拡張機能で、バージョンアップツールではありません。また、リリース当初はAmazon RDSのPostgreSQL 15.4(R2)以降が対象でしたが、現在はサポートされている一番古いバージョン13にも対応しているようです。

ちなみに、バージョン12のPostgreSQLについては2024年11月にサポートが終了したと述べましたが、Amazon Aurora PostgreSQLとAmazon RDS for PostgreSQLでは今年の2月末が利用期限でした

2025年4月以降開催予定のセミナーやイベント⁠ユーザ会の活動

イベントごとに利便性のあるオンライン開催や、従来通りのオンサイト(会場)開催、またはハイブリットが混在するようになっています。興味を持たれて参加したいイベントの開催形態にご注意ください。

オープンソースカンファレンス 2025 (5月~7月開催)

日程 〔Nagoya〕2025年5月31日(土)10:00~18:00
〔Shimane〕2025年6月21日(土)10:00~17:00
〔Hokkaido〕2025年7月5日(土)10:00~18:00
場所 〔Nagoya〕中小企業振興会館(名古屋市千種区)
〔Shimane〕松江テルサ(松江市)
〔Hokkaido〕札幌市産業振興センター 産業振興棟(札幌市白石区)
内容 Nagoyaは4月14日まで出展者募集中です。Hokkaidoは4月中旬から出展者募集予定、Shimaneは執筆時点ではまだ出展募集情報は出ていません。OSSデータベース関連の発表については、今後に公開されるプログラム詳細をご参照ください。
主催 オープンソースカンファレンス実行委員会

政府公共機関案件でNo.1オープンソースMySQLが活用される理由とは?

日程 2025年4月21日(月)16:00~17:30
場所 オンラインセミナー(Zoom)
内容 本セミナーでは、No.1オープンソースデータベースとして選択されているMySQLの活用によって政府公共案件のITの課題とそれらに対応する取り組みをご紹介します。 オープンソースの採用をIT政策の軸とする理由、世界各国の政府公共機関案件でのMySQL導入成功事例、NISTサイバーセキュリティフレームワークや米国国防総省のセキュリティ要件に対応するMySQLの高度なセキュリティ機能などについても解説いたします。
主催 日本オラクル セミナー事務局

MySQL 5.7や8.0の新規のパッチ提供終了に伴うリスクとバージョンアップ戦略

日程 2025年4月24日(木)16:00~17:30
場所 オンラインセミナー(Zoom)
内容 MySQL 5.7は2023年10月に新規のパッチやセキュリティ修正の提供が終了し、オラクルの「ライフタイム・サポート」のステージのSustaining Supportのステージに入っています。Sustaining Supportではサポートへのお問い合わせは可能ですが、修正プログラムが提供されないほか、セキュリティ・アラートおよびCritical Patch Updatesによる脆弱性情報の提供が行われません。またMySQL 8.0も2026年4月にSustaining Supportとなる予定です。本セミナーでは、MySQL 5.7や8.0を最新のLTSであるMySQL 8.4にバージョンアップしないことによるリスクやバージョンアップ作業の手順、 MySQL 8.4の主な新機能と改善点について解説します。
また、MySQL 5.7からMySQL 8.4への直接のバージョンアップは公式にはサポートされていません。したがって、MySQL 5.7→MySQL 8.0 →MySQL 8.4という2段階のバージョンアップ手順についても解説します。MySQLのバージョンアップを検討中の方はぜひご覧ください。
主催 日本オラクル セミナー事務局

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