今回は4月17日にリリースされる予定のUbuntu 25.04の特徴的な変更点をお知らせします。
Ubuntu 25.04 ”Plucky Puffin”
Ubuntu 25.04のコードネームは「Plucky Puffin」で、「 勇気あるツノメドリ」という意味です。24.10に続いて鳥類です。サポート期間は9か月間なので、より長いサポート期間が必要な場合は24.04.2 LTSをインストールしてください。
デフォルトのデスクトップは図1 です。
図1 25.04のデフォルトのデスクトップ
リリースノート
25.04をインストールする前に、必ずリリースノートに目を通してください。リリースノート は現在でも読めますが、日本語訳などの詳細な情報はリリース後に公開される(予定の)Ubuntu Weekly Topicsに掲載されます。
インストーラー
実のところ25.04はあまり特徴的な変更点がありませんが、インストーラーに関しては大きく手が入っています。
インストールされているUbuntuを削除してインストール
インストールしたいストレージにUbuntuがすでにインストールされている場合、「 どうやってUbuntuをインストールしますか?」に「( インストールされているUbuntuのバージョン)を削除してUbuntuをインストール」( Erase Ubuntu XX.XX and install Ubuntu)が追加されました。( 図2 )
図2 「 Erase Ubuntu XX.XX and install Ubuntu」が追加された
今までは「ディスクを削除してUbuntuをインストールする」しか選択肢がなかったので、よりわかりやすくなったのではないでしょうか。図3 の最終確認画面を見ると、Ubuntuがインストールされているパーティションだけを削除してそこに新バージョンをインストールしているようなので、1つのストレージで複数のパーティションを切っているようなケースで便利になりました。換言すると、/home/を別パーティションにしているような場合、インストールが簡単になりました。
図3 インストール実行前の最終確認画面
LVMと暗号化を使用
また、「 高度な機能」で「LVMと暗号化を使用」を選択できるようになっています(図4 ) 。第783回 の23.10から実装されたディスク丸ごと暗号化(Full Disk Encryption = FDE)とはまた別の、LVMとLUKSを組み合わせる方式です。第846回 のようなTPMを使用する方式でもないため、起動時に毎回パスフレーズの入力が必要になります。
図4 「 LVMと暗号化を使用」が常に表示されるようになった
リリースノートの説明を解釈すると、「 WindowsはBitLockerで暗号化しているのに、Ubuntuが暗号化しないのはおかしいですよね? よって、簡単に暗号化できるようにしておきました」ということを意図していると思われます。
BitLockerパーティションとの共存
Ubuntu Weekly Topics 2024年11月15日号 にある、BitLockerが有効な環境における「暗号化されていない」領域へのインストールモードがサポートされました。
つまり、BitLockerで暗号化されたパーティションがあり、かつUbuntuをインストールするのに充分な空き領域がある場合、そこにパーティションを作成してのUbuntuのインストールができるようになりました(図5 ) 。
図5 BitLockerパーティションを検出したところ
今更述べるまでもありませんが、Windowsのパーティションは簡単かつ安全に拡大縮小ができるため、事前に空き領域を作成しておけばUbuntuのインストールができます。
25.04 = GNOME 48
25.04のGNOMEはおおむねGNOME 48になっています。いつもの表を見ていきましょう。
バージョン
コンポーネント(パッケージ名)
3.36.x
gnome-menus
3.41.x
gcr
3.54.x
gnome-online-accounts
3.56.x
gnome-terminal
42.x
yelp
43.x
gnome-power-manager
45.x
gnome-logs
46.x
gnome-disk-utility
47.x
eog, gnome-bluetooth-3-common, gnome-session-bin, gnome-user-docs, seahorse, ubuntu-session
48.x
adwaita-icon-theme, baobab, gdm3, gnome-calculator, gnome-characters, gnome-clocks, gnome-control-center, gnome-font-viewer, gnome-initial-setup, gnome-keyring, gnome-remote-desktop, gnome-settings-daemon, gnome-shell, gnome-system-monitor, gnome-text-editor, mutter-common, nautilus, orca, papers, tecla
わかりやすい変更点は、「 ドキュメントビューアー」( パッケージ名はevince)の代わりに「ドキュメントビューアー」( パッケージ名はpapers)が追加されていることです。
日本語名だと紛らわしいので英語名にしますが、Papers はEvinceからフォークしてGTK4にポーティングされたバージョンです。図6 のように、Evinceから受ける印象とはすこし異なりますが、これはGTK4にポーティングされたからであり、機能的にはあまり大きな変更はありません。
図6 PapersでPDFを表示したところ
GNOME 48の新機能として興味深いのは、「 設定」に「Wellbeing」が追加されたことでしょう(図7 ) 。
図7 Wellbeingの表示例。起動しっぱなしで寝てしまったので、このようなことになっているだけであり、ずっと使用していたわけではない
Wellbeingの定義についてはWikipedia に詳しいです。ただし、機能的にはQOL に近いのか、一定時間を経過するとディスプレイをグレースケールにしてしまったり、休憩を促すリマインダーを表示したりできるようです。
イマドキの機能ではありますが、Ubuntuを使い続けることが直接幸せにつながるような(筆者のような?)人には、大きなお世話なのかもしれません。しかし、何事も程々が大切であるということを知るには便利な機能です。
あと注目すべきは、GNOMEの項目に掲載するのが適切かどうかはさておき、GIMPのバージョンが3.0になったことでしょう。もちろんデフォルトではインストールされていないので、別途インストールが必要です。また、25.04でなくてもsnapやFlatpakでも利用できるので、積極的な利用を呼びかけたいです。理由は次号でわかるかもしれません。
カーネルのバージョン
カーネルのバージョンは6.14で、24.10は6.11だったので順当なバージョンアップです。リリースノートによるとsched-ext という独自のスケジューラーがデフォルトになっています。sched-extに関しては、詳しくはUbuntu Weekly Topics 2024年3月1日号 で紹介しています。